昭和30年12月14日 参議院 予算委員会

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政府委員(法務省入国管理局長) 内田藤雄
お答え申し上げます。われわれ法務省の立場をちょっと簡単でございますが御説明させていただきたいと存じます。

今、大村に入っております者の数は大体1685ぐらいになっておりますが、その中で大多数は、1300名は密入国でございます。

当面問題になっております戦前からの犯罪者の数は約370でございますが、これらの人々はわれわれの方で手続を、国内法の手続はもちろんでございますが、しぼりにしぼってそういう数字になっております。大体前科1犯ないし2犯で入れております者は殺人とか強盗、あるいは麻薬の密輸、大量のブローカーあるいはヒロポンの大量の製造者といったようなものでございまして、あと前科3犯以上、これがほとんどその大半を占めるのでございますが、3犯から12犯までの人々の大体は窃盗、臓物故買、詐欺横領というようなことの常習者でございます。

従いましてわれわれの立場から申しますと、こういう悪質外国人は当然国外に退去できる、これは国内法の根拠ばかりでなく、国際的な慣行としても当然そうであると信じてやっているのでございまして、これらの人々を正当の理由なくして国内に釈放いたしまして、そのために善良なる日本国民が不当の被害をこうむるというようなことがあってはこれはまことに嘆かわしいことであるというのが第1の理由でございます。

それからもう1つは、将来のことを考えました場合には、現在刑務所に入っております人の約1割は朝鮮人でございます。毎月々々われわれの手元に退去強制の該当理由で送られて参ります者は約100名ほどでございまして、その中からただいま申し上げましたようなよくよくな悪質者を選んでわれわれは退去に付しておるのでございますが、そのパーセントは大体1割5分ないし2割でございます。今後この種の人々は毎月々々ふえて参るわけでございますので、これらの問題につきましても、将来何らかの保証を得たいというのが法務省としての切なる希望でございます。

それからもう1つ、われわれの非常に重要に考えておりますことは、重要と申しますか、外務省にぜひお願いしておるのでございますが、従来の李政権のやり方を見ますと、要するに人質を取って、それを種に彼らの政治的要求を1つ1つ要求して参るというようなきらいがございますので、この点につきまして、現在李ラインの問題、根本的な解決はこれはなかなかできないかもしれませんが、その解決できないならできない状態のもとにおいて今後どういうふうに措置していただくのか、それとの関連においてやはりわれわれの方のことも考えたい、そういたしませんと、今後ただ向うの人質を、人質と申しちゃ悪いかもしれませんが、漁民を返すためにわれわれはここで1つの譲歩をいたす、やり方によってはますますこれは漁民をつかまえた方がいい、つかまえていけばまた日本はへこむ、こういうことになっては大へんではないかという懸念から、できる限り外交交渉におきまして、将来に対する何らかの保証をとっていただけないだろうか、こういうことが法務省の希望として持っている点でございます。