昭和21年09月05日 貴族院 予算委員会

[041]
内務大臣 大村清一
朝鮮人に付きましては、在住者に付ては只今申上げる次第でありますが、近時の情勢と致しまして、誠に困った問題は、朝鮮内の状況から起りますることと思いまするが、嘗て内地に在住致したような経験を持って居りまする者は、我が国に於ける生活が偲ばれるものと見えまして、殆ど生命を賭して朝鮮から脱出し、日本に密入国をしようと云う数が、夥しいものに上って居るのであります、

7、8月の交になりますれば、7月に於きましての統計に依りますと、凡そ8000人の密入国者があったと云うことになって居ります、併し是は密入国のことでありまするから、統計に上らざる数字も可なりあるものと想像しなければならぬのであります、そこで7、8月の交になりますると、月々1万人内外の密入国者があったのであります、

其の中、是は関係府県の警察が全力を尽しまして、密入国者の防止に努めて居ります、今迄の成績に依りますると、7割乃至8割は逮捕致しまして、進駐軍に引渡して強制送還を致して居ります、併し1割、1000、2000人の者が密入国を致すのでありまして、密入国者は勢い総て闇の生活でなければ、生活出来ぬことは当然のことであります、是が為に我が国の社会治安を紊す虞が極めて多いのでありまして、此の点に付ては警察上非常に憂慮を致して居る次第であります、

現に関東地方に於きまして、兇暴なる強盗団、之を捕えて見ますると、結局密入国を致しました朝鮮人の「グールプ」であると云うような事件も、色々起って居るのであります、此の一例が雄弁に証明して居ります、

此の問題は誠に容易ならぬことと考えて居ります、そこで関係地方の警察を督励致しまして、警察官だけでは人が足りませぬから補助警察官をも増員致し、其の他有らゆる手段を講じまして、密入国を防止することに懸命の努力を致して居ります、併し之に付きましては更に海上哨戒をやる、或は優秀艦艇に依る密入国船の拿捕、或は之を撃沈をすると云うような処置を致しませぬと、あの滔々たる密入国者を阻止することは出来ないのであります、又飛行機に依る哨戒をやり、尚進みましては聨合軍の好意に依りまして、朝鮮から密出航をする者を取締ると云うような色々の問題に付きまして、手を打たなければならぬ点が残って居ると考えらるるのでございまするが、此の点に付きましては、只今折角、色々計画も致し、関係方面とも打合せを遂げて居るのでありまして、そう云う確乎たる自信ある防遏策が打立て得ると云うように考えて居る次第であります、

尚申添えて置きますが、此の密入国者は単に闇の生活をして犯罪の原因になると云うこと以外に、誠に困った問題でありまするが、朝鮮の内地に於きまして、「コレラ」が蔓延致して居りまして、密入国者が「コレラ」菌を持って参ります、そうしてそれが日本内地に於ける「コレラ」の蔓延の原因にもなる、

是は厚生省との間に於きまして数字が一致して居ないのでありますが、内務省の調に依りますと、70~80人の「コレラ」患者が出たことになって居る、厚生省の言う所に依りますと、それよりもずっと多いことになって居ります、何に致せ、100人位は「コレラ」患者があったと云うことは明かなのでございます、此の点は、誠に時節柄憂慮に堪えざる所であります、

而して又「コレラ」の蔓延の原因が密入国者にあると云うようなことに付きましては、進駐軍の安全にも関係の多いことでありまして、日本国と致しましては、進駐軍の安全を保持する上に於きましても、密入国を徹底的に防遏すると云うことに致さなければならぬと考えて居る次第であります、